-あいつの名前-


♂×2

A 組木 辰夫(くみき たつお)
B 高徳 良治(こうとく りょうじ)


あらすじ
同窓会があるので地元に帰ってきた二人
懐かしさもあいまって、かくれんぼを始めたのだが……。


A「もういいーかーい」
B「まーだだよ」
A「もういいーかーい」
B「まーだだよ」
A「もういいーかーい」
B「もういいよー」
A「よーし。って近い!」
B「あー見つかっちゃったか」
A「何やってるんだよ」
B「昔、一度は考えなかった?相手の後ろにずっといたら見つからないって」
A「だとしても、近いよ」
B「次、俺が鬼な」
A「もういいよー」
B「早いな。辰夫みーつけた」
A「いや、じゃなくて。かくれんぼ」
B「なんでだよ。懐かしいだろ」
A「二人でやっても飽きるよ。どうせこの後、同窓会があるんだからそっちでやろうぜ」
B「なんだよ、人がノスタルジーに浸っているっていうのに」
A「もっとさあ、あるだろ。大人になったなりの、ノスタルジー」
B「たしかに30過ぎた大人が二人でかくれんぼは辛いかもしれないけど」
A「タイムカプセルとかさあ」
B「やったっけ?」
A「あれ?あれ良治とじゃなかったっけ?」
B「まじで。俺意外のノスタルジーを俺の前で開けるなよー」
A「悪かったよ。でも、誰とだったっけな」
B「俺とのノスタルジーを開けろよー」
A「なんだよノスタルジーを開けるって」
B「心の思い出の箱だよ」
A「恥ずかしい事を平気な顔で言うな」
B「良く釣りとか行ったじゃん」
A「いや」
B「あれ?あれ辰夫じゃなかったっけ」
A「違う。俺、魚とか触れないもん」
B「あれ?」
A「おいおい、お前だって俺以外の奴とのノスタルジー開けてるじゃないの」
B「もう一人居たっけ?」
A「おい、何かリアクションしろよ。お前に乗ってやったのに恥ずかしいじゃねえか」
B「ごめんごめん。でもさ、もう一人、さ」
A「よく覚えてないな。俺はずっと良治としか遊んでなかった気がするけど」
B「タイムカプセル!」
A「え?それは、良治じゃないんだろ」
B「だから、その、俺じゃないもう一人の手掛かりがあるかもしれないだろ」
A「あーなるほど」
B「どこに埋めたの」
A「たしか、かくれんぼの木の下だったと思う」
B「スコップある?」
A「じいちゃんのが裏にあるから取ってくる」


FI SE 土を掘る音 

A「……あった」
B「うわ、お煎餅とか入れてたカンカンとか懐かしい」
A「錆が凄いな」
B「埋めた場所、結構深いな」
A「うん、犬に掘られないようにって」
B「子供の身長くらいあるじゃん」
A「あの頃は何でも全力でやってたからなあ」
B「今だって全力でやれよ。かくれんぼ」
A「真後ろに居た奴に言われたくない」
B「さてさて、箱の中身は何だろな」
A「御開帳〜」
B「ん。なんだこれ」
A「ビックリマンシールと、ガシャポンかな」
B「子供だなー」
A「子供だよ。逆に何を期待してたんだよ」
B「写真とか、手紙とか?」
A「手紙ねえ、たしか書いたような気がするんだけどな」
B「朽ちたか」
A「そんな綺麗さっぱり無くなるわけないだろ」
B「なあなあ、このガシャポンの中身って何ガンダム?」
A「興味津々だな!えっと、これはシャアザクだ」
B「おおう、お前はそっち側の人間か」
A「どっちも好きだったんだよ。これは百式」
B「どっちもっていうか、一人だな。それより、その紙は?」
A「うん、俺もわからなくて、ガシャポンから出てきた」
B「なんか書いてあんの?」
A「ちょっと待てよ、劣化してて破れそうなんだから」
B「……南?」
A「南に5歩、東に5歩」
B「何これ?」
A「思い出した!」
B「びっくりした」
A「そうだよ。この場所に何か埋めたんだよ」
B「南に5歩、東に5歩の場所?」
A「そう。確か当時こういうのが流行ってて」
B「どこから?」
A「この穴から。だから、ここから、1,2,3,4,5」
B「東に」
A「1,2,3,4,5!ここだ……!」
B「……どうした?」
A「いや」
B「何で掘らないんだよ」
A「いや、ここには何も埋まってないわ」
B「何でだよ」
A「勘違いだった。それより、もう一人の幼馴染だよ」
B「そこに手掛かりがあるかも知れないだろ」
A「違うよ、ここには何も埋まってないって」
B「怪しいな、どうしたんだよ突然。まさか」
A「なんだよ」
B「お前、その幼馴染を殺して、ここに埋めたんじゃないだろうな」
A「何言ってるんだよ。そんなわけないだろ」
B「俺もお前も忘れているのが証拠だよ。あいつ!絶対もう一人居た!!」
A「違うよ。あいつは引っ越して行ったんだ。お前に別れを言うのが辛くて言えなかったんだ」
B「そこまで覚えているなら、名前を言ってみろよ。やましい事が無いなら、ほら、言ってみろ」
A「ここまで、出掛かってるのに名前が出てこないんだよ」
B「やましい事があるからだろ!」
A「引っ越しの当日、偶然あいつにあったんだよ。あの時分からなかったけど、今思うと夜逃げだったんだと思う」
B「それで」
A「その時、思いつきでタイムカプセルを埋めようってなったんだ。20年後に会うために」
B「それって、何歳の時だ」
A「たしか小4」
B「ってことは、今年辺りがその約束の年じゃねーか。同窓会に来てるかも知れない」
A「じゃあ、そろそろ同窓会に行って確かめよう」
B「おう。じゃあ、ちょっと車の用意をしてくるよ」
A「わかった」

SE走りさる足音

A「危なかった……。念のため別の場所に移すか」

SE 土を掘る音

A「あった!」

SE箱を開ける音

A「ああ、忘れててごめんね。でも、思い出した。この顔」
B「どれどれ」
A「お前!車取りに行ったんじゃないのか」
B「騙されるかよ。で、何、その写真」
A「写真なんて無いよ」
B「もう見ちゃったんだよ。良いじゃん、時効だろ」
A「……わかったよ」
B「懐かしいー。真由美ちゃんじゃん。当時好きだったなー」
A「もういいだろ」
B「何、お前、これを見られたくなかったの」
A「だって、お前ら真由美ちゃんのこと好きだったのに、当時、俺は硬派を気取ってたからさ」
B「それで言い出せなくて写真とかも隠してたのか」
A「同窓会でチャンスとかあるかも知れないだろ。知られたくなかったんだよ」
B「言っただろ。俺は当時好きだったけど、もう結婚して子供もいるんだよ。だから」
A「俺を応援してくれるのか」
B「当たり前だろ。全力でアタックしてみろよ」
A「良治。すまん、ありがとう!俺、全力を出すよ!これからの人生、全力出して生きていくよ!!」
B「ところで、それ、写真の裏に何か書いてあるけど、何?」
A「え?俺、何か書いたっけ?……えーと。『ゴメン、結婚しました。信二』」
B「え?」
A「え?」
B「……車、出そうか」
A「うん。……まさかね。あいつが、ここに先に来てると思わなかったわ」
B「ご丁寧に一回掘って、また埋めて」
A「まさかね。こんな形で知ることになるとは思わなかったわ」
B「そうだよ信二だよ!」
A「チクショー!」
二人「おめでとさん!信二!!」