-ゲーム機破壊-



A 哲  (アキラ)    長男 ♂
B 悠人 (ユウト)    友人 ♂
C 哲二 (テツジ)    次男 ♂
D 母親 ♀


A「おい。どういうことだよ。なんで期日になっても、振り込まれてないのかな」

B「はい、すみません……あの」

A「すみませんじゃないんだよ。こっちは身銭切って貸してるんだよ。
出来ない約束されると迷惑なんだよ」

B「いえ、出来ない訳ではなくて、事業が上手くいっていたので、
少し増資のため、今回の返済額を少なくさせて……」

A「で、増えたのか」

B「……いえ。」

A「おい。哲二。店燃やせ」

C「うぃーす」

B「待ってください!お店だけは、お店だけは勘弁してください!」

A「いいか、この店は俺が貸した金で出来たんだよ」

B「ええ、重々承知しております。ですから」

A「ああ、だから、お前は俺の気持ちを考えてみろよ」

B「え?」

A「俺が自分の金で作った店を俺の手で壊す気持ちを」

B「そんな!待ってください!!」

C「悠人さん。あんたは店の心配よりも、どうやったら兄貴に許されるかを考えな」

B「お金!お金を今すぐ用意しますから」

A「もう遅いんだよ。壊れた信頼はなかなか直らないことを、身をもって知れ。おい、哲二!!」

c「ウィース」

D「待ちなさい!そんな恥ずかしいことしないの!」

A「何だよ。母さん」

D「悠人さんに呼ばれたの。悠人さんはあなたの友達でしょ。なんでこんな酷いことするの」

A「約束を破ったのはこいつだよ」

D「だからって限度があるでしょ。お店を燃やすこと無いじゃない」

A「うるさいな、母さんは外野だろ、関係ないんだから黙っててよ」

D「なんでそんなこと言うの。昔は母さんの言うこと素直に聞いたじゃない」

A「うるせーっていってるだろ!」

D「私はあなたをそんな子に育てた覚えはありません!!」







A「はあ?」

C「おい、ばばあ、今なんて言った」

D「え…だ、だから、そんな子に育てた覚えは…」

A「ゲーム機!!」

D「え?」

C「忘れたとは言わせないぞ。母さんに壊されたゲーム機のこと」

D「それが何よ」

A「今の状況と何が違うんだよ」

D「そんなの詭弁だわ、ケースバイケースじゃない」

C「じゃあ、なんでそれを育児のお手本のように言うんだよ」

D「違うわよ。壊すことが目的じゃなくて、うちの育児はこんな風ですよって伝えたの」

A「母さんは、さっき恥ずかしいことって言ったよね」

D「そんなこと言ったかしら」

C「いったよ。『そんな恥ずかしいことしないの』って」

A「恥ずかしいことを公表したの?」

D「なんで、二人して母さんを責めるの!私だって人なんだから忘れたり間違えたりするわよ」

A「僕は母さんに完璧を求められた」

D「だってそれは、あなたが組んだスケジュールでしょ」

A「母さん。日米和親条約って知ってる?」

D「知ってるわよ」

A「それと似てるよ。当時、基準の分からない僕に、そう言って責め立てたのを今でも覚えている」

C「僕は兄貴を見て学んだよ。世の中の渡り方を」

A「だから……相手を騙した方が勝ちなんだろ」

D「そんなこと言ってない!」

C「あの時は母さんの権力が絶対だった」

A「でも、今は違う!僕らはただ怒りに任せて壊すなんてことはしない」

D「え?」

C「そう、僕らは力をあわせて一つのモノを作るんだ!」

B「僕らはこの店で、みんなに本当の幸せを伝えるんだ!」

D「あれ?悠人くん?」

A「母さん。僕は母さんみたいに壊すことで伝えるんじゃない」

C「壊さなくても伝えられる。それを言いたかった」

A「あの時のキズを知ってほしかった。そのために悠人に協力してもらったんだ」

D「私が止めなかったらどうするのよ。」

C「そんなのケースバイケースだよ」

A「ありがとな、悠人」

B「いやあ、僕もアキラに貸してたゲームソフトをついでに壊されたから」

A「じゃあ、母さん。あの時のこと反省してね」

C「兄貴、店の外観がちょっと焼けちゃったよ」

B「ああ、大丈夫。それ焼くように用意した奴だから」

C「なーんだ」



三人の笑い



D「……なんだ。私の子育て、完璧じゃん」